「風立ちぬ」感想

  巷の評判がどういう大勢に傾いているのかは知らないが、素晴らしい映画だとは思わなかった。が、べつにつまらないわけではなく、好きなシーンがいくつかある良い映画だった。
 
  一番好きなのは「センスは時代を先駆ける。技術は後からついてくる」という言葉。
  設計に限った話でもあるまい。コレを受けて、となると陳腐だけれどセンスで時代を駆け抜ける人間になりたいものである。
 
  婚姻の儀、というのか、そのときの菜穂子は美しかった。
  そのままパタリと倒れてしまうのかとすら思ったが、そういう劇的なシーンがある映画ではない。淡々と……けれど、描かれていないところが描かれているような気持ちになれるので、そのへんの余韻がよかったのだろう。
 
  震災なんかは描写されるけれど、その惨状はすぐ次のシーンには復興している。二郎の挫折にしろ、徹底して暗い部分を表に出していないのは、「美しいところだけを、好きな人に見てもらいたかったのね」という言葉が作品全体のメッセージにもあるのかもしれない。
  とはいえ、決して美しいところしか見えないのではなく、その裏に裏があるからこそ、美しく見えるのだと思う。
 

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